DSPSの投薬治療
睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome, DSPS)は、生活習慣(睡眠衛生)の改善だけでは十分な効果が得られないことも多く、症状が重い場合や日常生活に大きな支障が出ている場合には薬物療法が有効な選択肢となります。安全で正しいお薬を内服することで体内時計を整え、朝起きられない、夜眠くならないなどの症状を改善できます。今回は起床困難改善オンラインクリニックで処方可能なお薬を4つ紹介します。
1. ロゼレム(ラメルテオン)
ロゼレムはメラトニン受容体に作用し、体内時計に直接働きかけて睡眠リズムを前進させる効果があります。(メラトニンについてはこちら)一般的な睡眠薬とは異なり、依存性がなく、安全性が高いことが特徴で、DSPS治療の第一選択薬として使用されています。また、ロゼレムは「日没」を体に伝える役割があり、ごく少量(1/20錠程度)を、就寝したい時刻の5時間程度前に服用します。毎日同じ時刻に内服し、時間のズレは30分以内に抑えましょう。これを継続することで、少しずつ睡眠時間を前倒しし、安定した睡眠リズムを整えることができます。服用開始後数日間は、内服直後に眠気が生じる場合があるため、継続する場合は医師にご相談ください。

2. メラトベル(メラトニン)
メラトベルは、体内で作られるメラトニンとほぼ同じ成分で、自然な眠気を促して睡眠リズムを整える効果があります。メラトベルの適応は小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善に限定されており、保険診療だと6歳~15歳のお子さんが対象となります。しかし、実際はそれ以上の年齢でも効果があることが知られているため当クリニックでは処方しております。副作用として翌日に眠気が残ることがありますが、睡眠の質への影響は少なく、夢見も稀です。また、メラトニンと同じ成分であるため依存性が極めて低いという特徴もあります。
3. デエビゴ(レンボレキサント)
デエビゴはロゼレムだけでは寝付けない場合や、ロゼレムを内服できなかった場合に使用します。オレキシン受容体を阻害して覚醒を抑制し、入眠を促す効果があります。依存性、耐性がなく、安全性が高いお薬です。また、夢見や金縛りなどの症状が稀に出現する場合があるため、就寝30分前、空腹時に服用すること(就寝前にご飯を食べたりしない)をおすすめします。また、翌日に眠気が続く場合は量を半分に減らしてみてください。

4. エビリファイ(アリピプラゾール)
エビリファイは、特に朝起きることが困難な場合に使用します。ドパミン受容体に部分的に作用し、脳内の興奮と抑制のバランスを整えることで朝の覚醒を促します。通常発達障害やうつ病などの治療に用いますが、超低用量(1mg)の内服で起床困難を改善することが知られています。毎日一定の時刻に服用することがポイントです。朝でも夜でも構いませんが、朝に飲むと昼間の眠気が出やすく、夜に飲むと眠りが浅くなることがあります。稀に頭痛、ソワソワ感、食欲減退や吐き気が出ることがありますが、いずれも副作用が生じる場合にはさらに減量をして少量で服用します。

薬物療法と生活習慣改善との両立
起床困難改善オンラインクリニックでは、これらの薬を使用しながらDSPSの改善を目指します。前回ご紹介した生活習慣改善法と併せて治療していくことで、より確実に睡眠・覚醒のリズムを整えることが可能です。朝起きられない、夜眠くならない等の症状でお困りの方はお気軽に、診察・処方を申込みはこちらよりご予約ください。
当クリニックの記事が皆さまの睡眠や健康の改善の一助となることを願っております。
参考文献
- 大森 勇、神林 孝、佐川 勇、今西 明、筒井 健、高橋 勇、竹島 正、高木 正、西野 聡、清水 孝. 低用量アリピプラゾールは睡眠相後退症候群患者の睡眠リズムを早め、夜間の睡眠時間を短縮した:オープンラベル臨床観察. Neuropsychiatr Dis Treat. 2018;14:1281-1286