DSPS改善のために
睡眠相後退症候群(delayed sleep phase syndrome, DSPS)は、体内時計が実際の時計よりも体質的に遅れてしまうことで、夜に眠れず朝起きられなくなる睡眠障害です。日常生活や学業、仕事に大きな影響を与えるため、改善にはまず生活習慣の見直しが重要です。以下では、DSPS改善のためのポイントを4つ紹介します。
1. 朝・夕の光の浴び方
光は体内時計をリセットする重要な要素です。朝はできるだけ早い時間に自然光を浴びることで、体内時計を整えることができます。一方で、夜間に強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されてしまい、眠気が妨げられます。特にスマートフォンやテレビのブルーライトは要注意です。夕方以降は部屋の明かりを50lx以下(間接照明程度)に切り替え、就寝前にはベッドでスマホ(ディスプレイ)使用や作業を控えることが推奨されます。
2. カフェイン・アルコールの摂取
カフェインやアルコールは睡眠の質に大きな影響を与えます。カフェインには覚醒作用があり、入眠を妨げる原因になります。そのため、夕方以降のカフェイン摂取は避け、麦茶、ハーブティー、水、コーン茶、そば茶など、カフェインを含まない飲み物を選ぶことが大切です。一方で、アルコールは入眠を助けるように感じるかもしれませんが、睡眠の後半の覚醒を促し、睡眠の質を低下させる可能性があります。毎日の飲酒は避け、適量を心がけることが重要です。
3. 規則正しい食事
食事のタイミングも体内時計に影響を与えます。特に朝食を食べた際に分泌されるインスリンは体内時計をリセットさせる効果が報告されています。毎日決まった時間に栄養バランスの取れた食事を摂ることで、睡眠リズムが安定しやすくなります。夜遅い時間の食事や過度な飲食は、胃腸の働きを活発にし、眠りを妨げる原因になるため注意が必要です。
4.布団に入っても眠れないときは
寝付けないときは、寝床(ベッド)から一旦出ましょう。暗めの場所でソファや居間の椅子などでリラックスして過ごし、眠くなってきたら布団に戻ります。重要なのは、「布団=眠れない場所」という認識をなくすことです。また、毎晩同じ時間に就寝し、同じ入眠儀式(読書やストレッチ、リラックスできる音楽を聴くなど)を行うことで、脳が「これから眠る時間だ」と認識しやすくなります。
まとめ
日々の小さな工夫が、DSPS改善への第一歩です。生活習慣を見直し、少しずつ規則正しい睡眠リズムを取り戻していきましょう。しかし、それでも症状が改善しない場合は、メラトニン製剤や「低用量ラメルテオン」などの薬物療法が有効です。次回は、この薬物療法について詳しくご紹介します。
参考文献
・福田裕美. 睡眠概日リズム調節における光と食事の影響に関する研究動向. 日本生理人類学会誌. 2019, 24, 1, p.1-7.